PEOPLE

まずは丁寧に、そして楽しく 少しの非日常を。

奈良の観光スポットと言えば、ならまちや奈良公園が挙げられますが、

約20分車を走らせるだけで、緑豊かな田原地区に出られます。

 

有名な世界遺産や駅が近くにあるわけではないけれど、

出会いたい景色や味がそこにある。

 

 

今回は奈良市茗荷町に静かに佇む、自家製パンと焼き菓子のお店「käsi」の加藤さんに、

お店のことや暮らしのことについてお話を伺ってきました。

 

 

加藤佐知子さん。

茗荷町に引っ越す以前は、奈良市西ノ京で8年ほど「パルロワ」というカフェを運営。

産休を経て、2015年にカフェ/自家製パンと焼菓子「käsi」をオープンさせた。

 

 

ご縁をもらった場所

 

(合田)

田原地区は奈良駅エリアから一つ山を越える感覚だったのですが、

想像以上に近く、印象が変わりました。

 

元々西ノ京で8年間カフェを経営されていたとのことですが、

なぜこちらに移られたのでしょうか?

 

(加藤さん)

そうなんです。意外とならまちも近いんですよ。

西ノ京という場所は大好きだったのですが、いつかは引っ越そうと色々場所を探していました。

 

そして2人目の子どもができた時ですね。

出産後2ヵ月でお店に復帰したのですが、少し無理をしてしまったこともあり、

一旦お店を閉めることにしたんです。

 

 

(加藤さん)

その時にこの田原という地域に出会い、

子育ての環境とお店を再開することを前提に引っ越してきました。

 

(合田)

緑豊かな環境でとっても素敵ですよね。

 

お店を移転する場合、お店の名前はそのままという方が多いような気がするのですが、

なぜ「パルロワ」から「käsi」に変えられたのですか?

 

(加藤さん)

パルロワの時はテイクアウトメニューがなく、

しっかりごはんを食べていただくカフェメニューをご提供していたんです。

観光地ということで当時はスタッフも4人いたのですが、

käsiは週3日営業で、軽いお食事と焼き菓子がメインのお店。

 

形態が変わるのだから心機一転させたいなと。

パルロワでの8年間をそぎ落とした感覚というのでしょうか。

 

 

 

(加藤さん)

新しい名前「käsi」には3つの意味を込めました。

 

ひとつは奈良を代表する動物「鹿(しか)」の逆さ読み。

そして、お菓子。

最後はフィンランド語で「手」。

手で作ることの喜び、ですね。

 

 

(加藤さん)

お店をクローズしている日でも製造をしています。

卵は地元田原の新鮮な有精卵。おいしいんですよ。

 

使用しているベーキングパウダーはアルミニウムフリーで、

もちろん保存料は一切使用していません。

子どもでも安心して食べられるものを作りたいんです。

 

このあたりはブルーベリー農園があるので、

今の季節摘みに行っては、お菓子やシロップにしていますね。

 

しんどくなるとできないので(笑)

続けるためにできる範囲で手作りしています。

 

(合田)

加藤さんのお話、そしてこのお店の佇まいから

大切にされていることが、身に染みるように伝わってきます。

きっとお客さんも同じようなことを感じられているのでないでしょうか。

 

(加藤さん)

自転車で来られる方、ペットと一緒に来られる方、

三世代で来られる方、男性おひとりで来られる方、

ありがたいことに老若男女問わず色々な方が来てくださいますね。

 

käsiに来てくださった方には

ちょっとだけ非日常でのんびりしていただきたいと思っています。

 

(合田)

ちょっとだけ、というのが心地良いですね。

 

きっとみなさんの一息つける場所になっていると思うのですが、

加藤さんにとってほっとできる時間というのはどんな時ですか?

 

 

(加藤さん)

お客さまとお話をしている時、

来てくださった親子連れの方がゆっくり話している姿を見る時、

あとはお家でぼーっとしている時でしょうか。

 

お昼は鳥の声を聴き、夜は虫の声を聴く。

ここにいるからこそできることですね。

 

ここに引っ越してから

土を触ろう、何か作ろう、と

お家で過ごす時間を以前より大切にするようになりました。

 

 

(加藤さん)

土、水、緑、田圃があるこの環境で、

これからも特別ではないけれど、毎日食べても飽きないような、

素材のおいしさを味わってもらえるような、

パンや焼き菓子をご提供していきたいですね。

 

 

 

 

 

しっとり雨が降る日、木漏れ日が降り注ぐ日、

どんな時も訪れた人の心にそっと寄り添ってくれるお店。

 

加藤さんが作られたものを大切にしたいと思うのは、

そこでの暮らしぶり、豊かな四季が、

映し出されているからではないでしょうか。

 

背伸びする日も必要だけど、

肩の力を抜いて、今に向き合う時も必要。

 

色々な人がそれぞれの想いを抱えて、

「käsi」での時間を過ごしているのだと感じました。

 

 

 

text by saki goda.