PEOPLE

自然に生息している姿から 植物をカタチに

―Housei Concept

土や水という生きる場所を離れ

瑞々しさや艶と引き換えに

朽ちる美しさを表現するDryFlower

 

永遠ではなく

時の流れと共にゆっくりと静かに姿を変えていく

植物の美しさを感じていただけますように

 

 

 

instagramの世界観が人気を呼んでいる奈良県在住の装植師、吉岡茜さん。

お店は持たず、オーダーや店舗装飾等を仕事とし、日々お花に向き合っています。

 

今回はどのような想いで作品を手掛けているのか、

また何をきかっけに装植師“Housei”を始めたのかをお聞きしてきました。

 

 

奈良県出身、奈良県在住。

今年10歳になる娘さんがいる一児の母。

 

ドライフラワーまたはドライフラワーになる生花を用いて、

オーダーギフトや空間装飾を受けている。

 

 

(合田)

わたしも茜さんの世界観のファンの一人で、いつもinstagramを拝見しています。

初めて見るような植物の組合わせや、そのかっこよさに惹かれているのですが、

いつからお花を始められたんでしょうか?

 

(茜さん)

娘が一歳半ぐらいの時、趣味でお花を触りはじめました。

 

もともと生花は好きだったのですが、レッスン等受けたことがなくて。

今はドライフラワーで作品を作っていますが、

ずっと「生花が一番、それに勝るものはない」とも思っていたんですよ。

 

(合田)

では何か茜さんの中できっかけがあって、ドライフラワーを扱うように?

 

(茜さん)

お家を建てた時に携わってくれていたデザイナーさんが結婚することになって、

お祝いにお花を贈ろうと近所のお花屋さんに行ったんです。

 

そこでどんなものをプレゼントするか相談していた時、

「お祝いだから自分で作ってみたら?ドライになる花材は仕入れてあげるから」

とオーナーさんに言われたんですよね。

 

今思うと初めて作ったリースをお祝いとしてプレゼントするって

ちょっと無謀だったなと思うんですが(笑)

それがすっごく楽しくて。

 

 

(茜さん)

娘が生まれてからずっと何かをはじめたいなという気持ちはあったんです。

わたしの母は生け花の先生だったんですけど、苦労人ながら何でもできる人で。

子どもながらに母のことをすごいな、と思ってたんですよね。

 

小学校の入学式や卒業式の時って、体育館にお花を飾ってありませんか?

わたしが通っていた学校ではいつも母が活けていて、

周りのお友だちに「茜ちゃんのお母さんかっこいいね」って言われるのがうれしくって。

 

でも身近にあり過ぎて、母からちゃんと習ったことはなかったんです。

 

 

(茜さん)

そして自分の娘が生まれた時にふと、

わたしが母親に抱いていたような「すごいな」っていうところを

見せられるものが何もない、どうしようと思ったんです。

 

仕事に繋がらなくてもいいから

ママが好きで、頑張っていることがあるよというものを

何か一つでも見せたかった。

 

お花じゃなくても良かったんですけど、

その思いと初めてリースを作ったタイミングが重なって、今に至ります。

それまではお花と関係のないお仕事をしていました。

 

(合田)

なるほど。

お母さんと娘さんの存在が行動する一つのきっかけになっていたんですね。

もともと趣味で始められたということですが、今に至るまでは独学ですか?

 

(茜さん)

お花を触り始めた当初は娘がまだ小さかったのでレッスンに通えなくて、

自分で作ってみては捨てて、作ってみては捨てて、を三年ぐらい続けていました。

花材代はお勉強代、と。

 

今思えば知らないからこそ色々なことをできたのかなと思います。

正しいことを知らないから挑戦できるというか。

 

 

(茜さん)

そしてお友だちから「作って」とオーダーをもらうようになってから、

知り合いの知り合いから…とお声がけをいただくようになっていきました。

 

コンスタンスに色々とお仕事をさせてもらうようになったのは

まだここ二年ぐらいで、走り始めたところですね。

 

花材によっては生花の時からいれこむこともありますが、

基本的にはドライフラワーを使います。

 

(合田)

実はドライフラワーにこんなにたくさん種類があるなんて思っていませんでした。

 

(茜さん)

それはよくみなさんにも言っていただきますね。

花材も出会いなので、

オーダーをいただいた時にこれ、と感じるものに出会います。

 

またドライになったらどうなるか分からないお花も仕入れてみます。

実験で(笑)

 

娘を学校に送り出してから市場に仕入れに行くんですが、

生花だとよくない子が逆にわたしにとっては使いたかったりするので、

残っているお花たちも魅力的なんです。

 

(合田)

そうやって仕入れられた生花は、全てこちらの“coya”でドライにされているんですよね?

 

(茜さん)

そうです。

当初はドライフラワーになったものを仕入れていたんですが、

なんか自分が思うものじゃなくて。

 

それこそ趣味で作っていた時は王道のあじさいや

資材屋さんで売っている丸いリースを使っていたんです。

でも丸いものをつくることにもすごく飽きてしまって、

自分が作りたいものじゃないと思ってきたんですよね。

 

そこから自分でベースも作るようになって、別に丸くなくていいんだと。

自分がやりたいことがちょっとずつ見えてきました。

 

 

 

(茜さん)

生け花をちゃんと習ったことはないのですが、

根本的には母の生け花の影響が大きいのかなと思います。

花材も枝ものが好きですし。

 

生け花はフラワーアレンジメントに比べて使う本数が少なく、

情景をつくるものなんですけど、

その一枝を眺めることにすごく時間をかけるんです。

花材と向き合う時間が長いというか。

 

だから枝ものが好きなのは生け花の影響なんだろうなと思います。

 

(合田)

初めて知りました。

他にインスピレーションを得られているものってあるのでしょうか?

 

(茜さん)

植物が自然に生息している姿、ですかね。

カタチにする時は中心を決めて、その一点から流れを作っていきます。

 

普通の木ってたくさん枝分かれしていてもなんだかまとまって見えませんか?

それって同じ幹から伸びているからなんですよね。

どれだけ枝分かれしていてもちゃんとバランスが良いっていうのは、

中心がぶれていないんです。

 

なのでワークショップの講師をさせていただく時にも

足元を揃える、ということをお話させていただきます。

 

どの作品も中心を決めて、そこからの流れを大事にする。

動きは作るけれども、中心は動かさない。

そういう意識は、自然に生えている植物が一番のヒントですね。

 

(合田)

どんな花材を使っても茜さんの作品だとわかる、

そして統一して見えるのはそういった意識があるからなんですね。

何だか人としても同じことがいえる気がします。

 

例えば、オーダーを受けるときに意識されていること等はありますか?

 

(茜さん)

初めてオーダーをいただいたお客さまとは、

電話でお打合せをさせていただくことにしているんです。

 

どんなお花を使うかということはもちろんですが、

お花に関係のないことをお話させていただいたり、

声のトーン、イメージなど、文字じゃわからないことを教えていただいています。

 

色々な手段が発達した今、お手間だと思うのですが可能な限りお願いしていて。

でもみなさん大体時間を作ってくださいますね。

本当に周りの方に恵まれています。

 

 

(茜さん)

お声がけいただいてイベントに出店したり、ギャラリーで展示をしたりしているのですが、

自分の中で“オーダーは勉強”だと思っています。

 

予算があって、想いがあって、いくつかの条件の中で作る。

最終的にはほとんどの方がお任せしますとおっしゃってくれるのですが、

自分勝手に作れるものではないので、

常に頭の片隅では「こういう方だったな」「こういう色が好きっておっしゃってたな」

というのを思い返しながら束ねています。

 

自分だったらこうしていたけど、

こういうのが好きだとおっしゃっていたからこんな感じかなと、

作っていて初めて見えてくるものもあるので、毎回勉強だなと思います。

感覚的にはやっぱり個展とは違いますね。

 

お渡しして、届きましたとご連絡がくるまでは今でもどきどきします。

もしかしてイメージと違ってたかな…とか。

何回ご依頼いただいても緊張します。

 

でもその緊張がなくなると慣れになってしまうのかなと思うので、

ご依頼いただける限りオーダーはずっと続けていきたいですね。

 

(合田)

茜さんの作品に使われるお花はとっても幸せだと思います…!

娘さんと過ごす時間とのバランスは、どのようにとられているんでしょうか?

 

(茜さん)

お花を始めた頃は娘がまだ小さかったので、

起きている時間にはお花を絶対触らないようにしていたんです。

 

お花を触っている時はママがかまってくれないからと

お花を嫌いになってほしくなかったので。

寝ている時しか触らないと決めていました。

 

小学校に入ってからは、土日にお仕事で出かける等

お留守番をお願いすることもでてきたのですが、

応援してくれていますし「行ってきて」と言ってくれますね。

理解してくれていると思います。

 

 

 

(合田)

想いを伝えたいと思っていた娘さんに今の姿を応援されるというのはうれしいですよね。

そしてこれから茜さんが挑戦してみたいことはありますか?

 

(茜さん)

表現としてのお花をやりたいなと思っています。

 

昨年、五條のお菓子屋さんの二階で

“纏う”というテーマの個展をさせていただいたんです。

 

仕入れに行った時可愛い花があったら普通に持って歩きたいなとか、

誰に見せるわけでもないけど出かけるときに鞄に入れて出かけたいなとか、

ずっとお花を身近に置きたいなっていう気持ちがあったんですよね。

それで自分が持って歩きたい、付けて歩きたいお花をを作りたい、と。

 

テーマを自分の中で一つ決めてそれに沿ったお花を表現する、

という時間を年に一度つくりたいなと思っています。

 

 

 

 

 

茜さんの世界観が支持されているのは、

茜さんが持つ、ぶれない思いや愛情が

作品となって形になっているからだと強く感じました。

 

人は自然とともに生き、生かされていて、

その姿から学ぶことがたくさんある。

 

茜さんとお話することで、

そのことに改めて気付かされました。

 

text by saki goda.