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やったことないけど、 やってみる

コンフィチュールという調味料をご存知ですか?

 

フランス語で、野菜や果物を砂糖やお酒で煮込んだもののこと。

ジャムのような…

でも、一口食べると知っているジャムとはなんだか違う…。

 

 

 

 

奈良には、“今しか食べられない”コンフィチュールを生み出す素敵な女性がいます。

雑誌はもちろん、レストランでのイベントや大学での講習会など、

confiture fumiの作家として幅広く、パワフルに活躍する東史さん。

 

今回はコンフィチュールを手掛けるようになったきっかけ、

そしてそのパワーの源をお聞きしました。

 

 

奈良県吉野町出身。

コンフィチュールの世界を吉野から伝えることができれば、と

小さいころから祖父母や両親と一緒に生活していた母屋で

「confiture cafe narayamasou」を開き、工房としている。

 

 

 

 

 

建築士からコンフィチュール作りへ

 

 

(合田)

色々な食のイベントで史さんとお会いして、

その色使いや意外な食材の組み合わせにびっくりすることがあります!

あらためて、コンフィチュールを手掛けるようになったきっかけを教えてください。

 

(史さん)

実はお菓子作りが好きというわけでもなく、大学卒業後は設計事務所に就職して、

元々は建築士として図面を引くような仕事をしていたのね。

 

それである時、友達が奈良でカフェをオープンするから、内装のアドバイザーとして携わって、

オープン時はスタッフも足りないから、たまにお店のお手伝いもするようになり…。

当時そのカフェでは、フレンチトーストを出していたから、

トッピングとして遊び感覚でフレッシュなコンフィチュールを作ってみたの。

そしたらそれがお客さんから好評で、買いたいという声をもらうようになって、

生まれて初めてのコンフィチュール作りに(笑)

 

 

(合田)

すごい!初めてのコンフィチュール作りがヒットしたんですね!

でも二足のわらじから今はコンフィチュール作家として専念されていますが、

どんなタイミングでこの道にしぼろうと思ったんですか?

 

(史さん)

もう11年前になるけど、それまでの一般的なジャムって

長持ちさせるために砂糖が多くてこってりしたものが多かったから、

素材を生かして作るっていうのが面白いなと、色々試してみるようになったの。

 

その時に野菜ソムリエの資格を取っていたのもあるけど、

ある飲食店のオーナーさんに販売の相談をしたら

「せっかくなら野菜を使ったコンフィチュールを作ってみたら?《とアドバイスをもらったのね。

それでスーパーに行って野菜コーナーの片っ端から野菜を買って、

全部砂糖と合わせて、そのオーナーさんに試食してもらうことに。

そしたら野菜のコンフィチュールを販売してくれることになって。

(合田)

販売へのきっかけがそこで生まれたんですね!

 

(史さん)

そう!フルーツのジャムはたくさんあるけど、野菜を使ったものはなかったから、

やったことないけど、やってみようかな、って。

まだコンフィチュールっていう言葉も浸透してない

「コンフィチュールって何?」っていう時代に。

どんなものなのか説明するのが難しかったなあ。

 

でもその後は、飲食店で購入してくれたお客さんが通販で販売しませんか?

って声をかけてくれて、また新たな道が広がったし、

その通販サイトがきっかけで飲食店の方がまた販売してくれるようになったり。

コンフィチュールだけにしようと思った一番のきっかけは、

野菜パフェのためのトマトのコンフィチュールを2週間で100kg作ることになった時。

一人で一ヶ月やり切って、建築士をやめました(笑)

 

 

 

 

本は読まずに、色々試す

 

 

(合田)

一人でやり切るそのパワーと体力。さすが史さんですよね。

やり始めたらとことんやる、というか。

 

(史さん)

その時から取材や講師のお仕事をいただくようになって、

この10年走り続けてきた感じかな。

全部自己流なんだけどね。

 

本を読むとその通りにしなきゃいけないって思っちゃうし、

新しい発見もない気がして。

シェフ達からは基礎の上の応用って怒られるけど、本は絶対に読まない(笑)

 

(合田)

絶対に(笑)

自己流ですけど「この味がおいしい」って感じる感覚とか、

お客さんから好評の声をもらえる商品を生み出せるのがすごいですよね。

 

(史さん)

結局オタクなんだよね。

本で読めばわかること、インターネットで調べればわかることも、

自分で紊得しないと前に進めないから色々試してみる。

例えば苺のコンフィチュールを作るときも、何通りも作って失敗してみる!

半分に切ったり、そのまま入れたり。

砂糖と合わせてから炊いたり、後入れして炊いてみたり。

作った後も冷蔵庫に入れておいたり、直射日光にあててみたり。

そんなことを色んな素材で、三年間は繰り返したかな。

努力じゃなくて、楽しんでやってたよ。

 

(合田)

三年も!

一つの味が完成するまでに長い時間がかけられてるんですね。

その時から、この場所(narayamasou)で作ってたんですよね?

 

 

(史さん)

そう。

今もシーズン20~30種類、年間100種類ぐらいのコンフィチュールをここで作ってます。

素材によって砂糖や切り方、炊き時間を変えるから、100通りのレシピでね。

例えば、青トマトと赤トマト、同じトマトでも熟し方が全く違うから

それぞれに合わせたレシピがあるの。

交通の便を考えるともっと利便性のいい場所で作れるけど、

この実家の畑に無農薬の野菜や果物があったのも理由の一つ。

上揃いだけど収穫したての素材の旨みや味は濃くって。

今年はもう一度畑をちゃんと耕そうと思ってるよ。

 

あとは、ここで生まれ育ってるからこの環境が自分に合ってるのが大きいかな。

アイディアが生まれる時って環境が大事で、

マンションで煮詰まってる時より、ここでぼーっとしてる方が出てくる。

吉野を出たときは出たくて仕方がなかったけど、

吉野が意外と好きだったってことに気づいた(笑)

 

(合田)

吉野が史さんのお仕事の中心であり、リフレッシュできる場所なんですね。

お話を聞けば聞くほど何事にも全力なイメージが…!

 

(史さん)

仕事のことを仕事と思ってないところがあるのかな。

必死でやってるけど、おいしいものを作りたいっていう思いが一番。

味見のために朝ご飯は食べない生活をしてるんだけど、

このお仕事であんまりストレスを感じることはなくて。

それでもストレスを感じたときは、お風呂に行って汗をかく!

休みもあるようでないし、ないようであるっていう感覚。

旦那さんがご飯食べてる横で請求書打ってる時もあるし、

仕事も主婦もごちゃまぜだよ(笑)

性格的にメリハリある方がしんどいのかもしれない。

 

 

 

 

生産者の一人として選んでもらえたら

 

 

(合田)

なるほど。ルーティンはあるけど決めすぎない、生活ですよね。

 

(史さん)

そう。何をするにもあまり決めすぎないようにしてるかな。

例えば野菜を仕入れに行っても、良いものがなければ買わないよ。

fumiのコンフィチュールは基本的にはお任せで作らせてもらっていて、

時期的においしくない果物を用意するよりも、

おいしいものをオススメさせてもらう販売の仕方をさせてもらってるの。

 

(合田)

その方が買う側からしても間違いなくおいしいものを食べられますもんね。

今後の活動としてはこのnarayamasouと販売がメインになるんですか?

 

(史さん)

うん、あと一番やりたいこととしてはレストランのシェフに使ってもらうこと。

フレンチ・イタリアン・中華・和食、色んなものに使えるものだと思ってます。

例えばどこどこのお味噌が好みとか、

あそこのお塩はおいしいっていう感覚で、

数ある中でもconfiture fumiのコンフィチュールはおいしいって、

生産者の一人として選んでもらえたらうれしいな。

 

 

 

 

努力と思うようなことも楽しめる。

怖がらず、失敗してみる。

その背景にあるのは、

紊得できる物を作りたい、喜んでもらいたい、という思い。

 

ストイックにみえる一方“決めすぎない”をマイルールに、

バランスをとっているのが史さんの暮らし方。

 

生活と仕事のメリハリがあってもなくても、

どんな時間を、どんな思いを大切にしたいかということで

暮らしという考え方は変わるのかもしれません。

 

 

 

text by saki goda.